Robocop: Rogue City(Steam版)のレビューです
今回の記事ではSteam版の「Robocop: Rogue City」のレビューをしたいと思います。難易度スタンダードでいちおう全部クリアしての感想です。なお、今回の記事では日本で1988年に公開された、ポール・バーホーベン監督の映画作品「ロボコップ」の1作目を基本的に「原作」と呼称します。
はじめに(大前提として感謝と称賛の気持でいっぱい)
ロボコップ大好きな私ですが、今回の記事はあくまでもゲームのレビューということで、一人のゲーム好きとして、いろいろと遠慮なく批評を書きます。
しかし大前提として、私はこのゲームが発売されたこと自体が、すごいことだと思ってます。映画の1作目である「ロボコップ」が日本で公開されたのは1988年ですので、この記事を書いている2024年11月から数えて実に37年も前の作品ということになります。
原作「ロボコップ」は大ヒットし、1作目以降も次々と続編が制作されましたが、とはいえ日本での知名度は同じSF作品の「ターミネーター」シリーズや「マトリックス」シリーズのそれには遠く及ばない、というのが私個人の印象でした。
そんなわけで、普通、こんな古い題材で新たにゲームをリリースしようなんて思いませんよね…リスク高すぎでしょう。だからこその「感謝と称賛」の気持ちが湧いてくる、わけです。
もちろん私はこの映画が大好きで何度見たかわからないほどです。ブルーレイディスクのリマスター版も買いましたしね。
繰り返しになりますが、こうした背景から、私は基本的にこのゲームに対して感謝と称賛の気持でいっぱいというのが正直なところなのです。
演出面(原作リスペクトがすごい)
とにかく原作リスペクトというか再現度がすごい。デトロイトの街並み、路駐している車、「レンガ造りの廃工場and茶色の水たまり」の原作でおなじみのデザインはもちろん、悪党が所持している武器のチョイスなどの小道具にいたるまで、完全に原作「ロボコップ」の世界が再現されています。
なお本作は完全に一人称視点のゲームであり、三人称視点を選ぶことはできません。「ロボコップの視点でプレイすることでロボコップになりきれる」を目指したゲームシステムといえます。
ただ、私を含めてロボコップが好きな人は「ロボコップの姿を見たいのだが」という人も少なくないかと思うので、一人称視点のみである点は賛否両論あるかもです。
あのテーマ曲も!
音楽面の再現度も素晴らしいです。ロボコップといえば、のあのテーマがそのまま使われて要所で流れる演出にはファンなら鳥肌モノです。
SE(Sound Effect)の面でも、ロボコップが歩くたびに「ガッシャ・ガッシャ」と低音の効いたメカメカしい足音が響くなどの演出も秀逸です。
一点、ロボコップの愛銃である「オート9」の発砲音だけはコレジャナイと感じてしまったので、私はMODをインストールして満足いくSEに差し替えました。あ、オート9を大腿部のホルスターに格納する前のガンスピンももちろん再現されていますよ(ぜいたくを言えば任意のタイミングでやりたかったが…)。
MODについて
そのMODですが、この記事を書いている2024年12月時点で、NEXUS MODSでは54種類のMODが公開されていました。決して多くはないですが、クロスヘアを原作に寄せるためのMODなど、MODの方も原作愛に溢れたユニークなものが公開されています。
ゲーム性は…うーん残念
映像や音楽などの演出面の原作再現度がハンパなく、まさに原作リスペクトに溢れており感動モノなのに対し、今作のゲーム性はかなり残念なものになってしまってます…
ひたすらヘッドショットを狙う平凡なFPSである
今作のゲーム性としては、平凡なFPSです。さらにオープンワールドではなくステージ制です。せめて「車を運転して自由に移動ができ、無線で事件発生の通報を受けて現場に向かう」くらいの自由度は欲しかった…
原作のロボコップはヘッドショットはしないんですが…
原作では、ロボコップが犯人を殺したと明確に断定できる描写は意外なほど少ないです。私の認識が間違ってなければ、明確にそれとわかるのは3人だけです。ちなみにヘッドショットを決めるシーンは一つもありません。
原作でいちばん盛り上がるシーン(だと勝手に思っている)麻薬工場をロボコップがガサ入れする有名なシーンでは激しい銃撃戦が繰り広げられますが、このシーンでもロボコップが犯罪者を殺害したとはっきりわかる描写は一つもありません。
これは原作を見た人ならわかると思うのですが、すでに述べた3人以外のシーンでは、すべてロボコップは「犯人の急所を外して撃ち、生かしたまま逮捕した」とも解釈できる描写になっていると私は思ってます。
あくまでもロボコップは警察用のサイボーグなので、たとえ武装した犯罪者が相手であっても容赦なくヘッドショットしてバンバン射殺してたら法律的にもマズイだろうことは想像に難くないですしね。
誤解いただきたくないのですが、私はゲームにおける暴力描写がよくないとか、個人的に暴力描写が好きではないとか、そういう観点からこだわっているわけではありません。ただ、原作が持つテイストをゲームにも活かしてほしかったという感想を述べているだけです。
原作の監督であるポール・バーホーベンの演出意図がどのようなものだったのか私は知りませんし、単にレーティング回避のための演出なのかもしれませんが、原作ではとにかくそのようになっています。
ロボコップが警官であることから生じるルール・モラル上の縛りを活かしたゲームデザインにしてほしかった
ところが本作のゲーム性は、先にも述べたように平凡なFPSになっており、よくある「ヘッドショット至上」です。サクサク進めたければバシバシとヘッドショットを決めて頭をふっとばすのが効率が良いプレイです。犯罪者の手足を撃って無力化するなどの要素はありません。
そのため、先に述べた私の中の原作映画「ロボコップ」という作品が持つ世界観と、本作との間に大きなギャップを感じてしまったのです。
ここは原作ファンとしては、プレイヤーに択を与えてほしかったと思うのです。つまり、「バシバシとヘッドショットを決めて犯人を射殺しまくるプレイ」がしたいプレイヤーはそうすればいいし、「極力殺さずに生かしたまま逮捕する」、いわゆる不殺プレイがしたいプレイヤーにもその自由を与える、ということです。
例としては「Ready or Not」のように射殺と逮捕とでミッションクリア後の評価に影響が出る、というシステムを挙げたいと思います。
ただ個人的には、本作でプレイヤーに不殺プレイを強い過ぎることは、ロボコップが持つヒロイズムを台無しにしてしまうおそれもあります。ですので、この辺のさじ加減は非常に難しいとは思います。
それでもロボコップが「警官」であることにより生じる「法執行者としての倫理上・ルール上の縛り」をぜひともゲームに落とし込んでほしかったと思うのです。
前半はゲームとしても悪くはない
ニューゲームした後の実際の流れですが、ゲームスタートから中盤までは、ワクワクしながら普通に楽しくプレイすることができました。不親切だと感じた点も特にありません。今作では任意のスキルを上げることができ、伸ばすスキルによってある程度、ステージクリアの自由度が提供されています。どのスキルを伸ばしていくかを考えている時間はとても楽しいものでした。
ただ残念な点としては、ステージ制なのに前半のステージではどうやってもスキルレベルが足らず開けられない金庫などが頻発します。つまり今作は周回が前提になっています。これはちょっといただけないと感じました。
後半に進むにつれてゲーム性崩壊
しかし、原作ファンならみんな大好き「ED-209」が登場するあたりから、今作の雲行きはあやしくなってきます。
ただただ硬すぎるザコとボス
今作でいちばん残念なのはボス戦です。「ただただ火力高すぎ・硬すぎなだけ」なボスを相手に、動きの遅いロボコップを操作してチマチマと避けながら(まあ回避はほぼできないですが)ありったけの弾をぶち込みジリジリと敵の体力を削っていく、といった、なんともロボコップらしくない、プレイするのが苦痛になってしまう消耗戦を強いられるゲーム性になってしまっています。
ボス戦にもやはり攻略の選択肢が欲しかった。真っ向勝負もよし、ギミックで倒すもよし、あるいはステルルアタックで…といったような複数の攻略パターンがあってもよかったのではないかと思います。
「火力高すぎ・硬すぎ」なのはボスだけではなく、ザコ敵にも同じことがいえます。一瞬でこちらの体力を削ってくる固定砲台チックな敵や、当たればほぼ即死のスナイパーなどが、ゲーム後半になると怒涛のごとく鬼配置されてきます。
私は終盤まで難易度スタンダードでプレイしてきましたが、終盤だけはさすがにこれは無理だと諦め、難易度を下げてなんとかクリアした次第です。
ただ素晴らしい点として、標準武器であるオート9のみでクリア可能なように調整されていた点は高く評価したいと思いました。個人的にはロボコップが使う武器はオート9と、あとはスポット的にコブラ砲だけで良いと思ってるので。
敵キャラクターに魅力がない
本作の敵キャラクターについても、お世辞にも魅力があるとは私は感じられませんでした。すべての人物に信念が感じられず、なんのために行動しているのかが曖昧だと感じる演出でした。原作の悪役クラレンスやジョーンズ、映画2作目のケインなどのような魅力的な敵役を描いてほしかったと思います。
おわりに
今回の記事は「Robocop: Rogue City」(Steam版)のレビューでした。
まとめとしては、本作のゲーム性に期待して「よくできた面白いFPS」という観点から購入したら残念な気持ちになるかもしれません。
- 「原作をよく知らない」
- 「原作に思い入れは特にない」
という方も、同様に本作の購入は避けたほうが無難かもしれません。
しかし原作「ロボコップ(日本公開1988年)のファンであれば「動かせるファンブック」という認識で購入するなら本作は十分に満足できるかと思います。後半の難易度崩壊については、難易度を下げることで対応可能でしょう。よほどFPSが苦手という人でない限りクリアは可能だと思います。
最期に、くどいようですが、37年も前に生まれた映画を題材に、しかも別にリバイバルブームでもなんでもないタイミングにも関わらず今作を発売してくれたことには、心から感謝と賞賛の意を表明したいと思います。
グダグダと批評を並べましたが、あくまでもロボコップ大好き&ゲーム大好きな素人の戯言です。
願わくば、続編にもぜひ期待したいですね。
以上でした。最期までお読みいただきありがとうございます。
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